
Episode #1
ボイスドラマ「夕陽のジンクス」
<p>夕陽のジンクス、潮の香り|御前崎アンサンブル #1</p><p>説明文:「一度住んだら、二度と離れたくなくなる──。」静岡県御前崎市の茶園で働く「みさき」と、埼玉・熊谷の老舗和菓子屋の跡継ぎ「つむぎ」。お茶がつないだ二人の運命は、遠距離恋愛を経て、あるクリスマスの夜に大きく動き出す。</p><p>御前崎の美しい夕陽と灯台を舞台に描く、切なくも温かい愛の物語。特産茶「つゆひかり」の甘みと、狭山茶の深い味わいが織りなす「アンサンブル」をお楽しみください。</p><p>【ペルソナ】</p><p>・みさき(25歳)=家は茶畑と住宅が混在する白羽地区で茶園を営む。ECサイトでさまざまな販路を探している。東京で開催されたお茶のマルシェでつむぎと知り合い、付き合うようになる</p><p>・つむぎ(27歳)=熊谷の老舗和菓子店の店主。父が亡くなり二代目として奮闘している。熊谷では数少ない狭山茶のスイーツを扱うお店として人気が出てきた</p><p>【プロローグ:2025年12月24日/御前埼灯台前の広場「ウミエール」】</p><p>◾️SE:クリスマスの雑踏</p><p>『みさき、結婚しよう』</p><p>クリスマスイブのウミエール。御前埼灯台前広場。</p><p>ライトアップされた白亜の灯台が、</p><p>幻想的に浮かび上がる。</p><p>私の名前は、みさき。</p><p>25歳。独身。</p><p>ここ御前崎の白羽(しろわ)で、茶園の一人娘として生まれた。</p><p>茶畑は、茶摘みから出荷まで、父と母が、2人で切り盛りしている。</p><p>私は、もっぱら通販担当。</p><p>SNSでハッシュタグ「パパのこだわり新茶」として展開中。</p><p>鮮やかな緑色と天然の甘みに、結構人気があるんだ。</p><p>ということで、人気商品は、希少品種『つゆひかり』。</p><p>”一番良い状態の芽”だけを、摘み取っているんだもん。</p><p>『深蒸し製法』で、コクと甘みを最大限に引き出すの。</p><p>って、あ、これ、企業秘密だった・・</p><p>で、</p><p>つむぎと出会ったのは、青山のマルシェ。ファーマーズマーケット。</p><p>【シーン1:2025年4月/東京・青山ファーマーズマーケット】</p><p>◾️SE:青山ファーマーズマーケットの雑踏</p><p>「よかったらおひとつどうぞ」</p><p>そう言って、彼が手渡したのは和菓子?</p><p>「狭山茶(さやまちゃ)の”火入れ琥珀糖(こはくとう)”です」</p><p>「へえ〜、美味しそうですね」</p><p>「ぜひ食べてみてください」</p><p>「ありがとうございます。いただきます・・・</p><p>・・・うん・・大人の味。</p><p>外はシャリッ、中はプルッとした食感・・」</p><p>「でしょう。</p><p>狭山茶といったら『味の濃さ』。</p><p>それを極限まで引き出したんです。</p><p>一口でお茶を一杯飲んだような満足感・・それを目指しました」</p><p>「なるほど・・」</p><p>「昔から、</p><p>色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす、って言うでしょ」</p><p>「はい・・・」</p><p>「今日はどちらから?」</p><p>「静岡です」</p><p>「え・・」</p><p>「ごめんなさい。</p><p>実は私も出店してるんです、向こうの端っこで。</p><p>いまは休憩中」</p><p>「何を出店してるんですか?」</p><p>「お茶。</p><p>つゆひかり、って言うお茶よ。</p><p>一番茶を持ってきてるの」</p><p>「おっと・・」</p><p>「うちのお茶は、渋みが少なくて、甘くてまろやかで旨味があるんです。</p><p>狭山茶とは対極ですね(笑)」</p><p>「詰んだぁ〜。</p><p>ホントに失礼しました」</p><p>「いいえ〜。とっても美味しかったです。</p><p>じゃまた・・・」</p><p>「あ、待って」</p><p>「え」</p><p>「あとで、あなたのお店に寄ります!</p><p>ぜひ、つゆひかりを味わわせてください」</p><p>「ふふふ・・よろこんで」</p><p>「あの、ボクは『つむぎ』といいます。</p><p>あなたは?」</p><p>これが、つむぎと私との出会いだった。</p><p>つむぎは27歳。独身。</p><p>埼玉県の熊谷市で、お父さんと妹の3人暮らし。</p><p>実家の和菓子屋を継ぐために修行中だった。</p><p>「狭山茶が好きすぎて、和菓子屋なのに茶葉の選定からこだわっちゃうんです」</p><p>そう言って笑った。</p><p>実際に、熊谷では珍しく、狭山茶を使ったデザートを次々と開発。</p><p>『お茶の味が濃すぎる和菓子」ってSNSで話題になると</p><p> 遠方からもお客さんが詰めかけるようになった。</p><p>で、あの日、初めてファーマーズマーケットに出店したんだって。</p><p>”味の狭山”に誇りを持つ彼と、”つゆひかり”の甘みを信じる私。</p><p>正反対のお茶に惹かれるように、私たちの距離は近づいていった。</p><p>気がつくと、新幹線を乗り継ぐ遠距離恋愛。</p><p>4時間30分の距離なんてハードルは、手を繋いで軽々と飛び越えていった。</p><p>【シーン2:2025年夏/熊谷から御前崎へ】</p><p>◾️SE:熊谷うちわ祭りの雑踏</p><p>「わあ〜、すごい人!」</p><p>「人より山車と屋台だろ、すごいのは」</p><p>「雪くま、おいしい!」</p><p>「そっちかぁ」</p><p>日本一暑い街の、日本一熱いお祭り。</p><p>『熊谷うちわ祭り』に感動した次の週は・・・</p><p>◾️SE:御前崎みなと夏祭の音と波の音</p><p>「すごいな、何発あがるんだろ、打ち上げ花火」</p><p>「3,000発とか5,000発だって」</p><p>「ねえ、お腹減らない?</p><p>あっちの出店でなんか食べようよ」</p><p>『御前崎みなと夏祭』で花火と食べ歩きを楽しむ。</p><p>海のないまちから来たつむぎ。</p><p>つむぎの瞳は、どんどん輝いていった。</p><p>◾️SE:御前崎の波の音</p><p>「サーフィンって見てるだけで楽しいんだな」</p><p>「あれはウィンドサーフィン。</p><p>色とりどりのセールがオシャレでしょ」</p><p>「若いうちにやっておけばよかった」</p><p>「おぢさんみたいに言わないで。</p><p>今からだって遅くはないよ」</p><p>「ああ。もし、ここに住んだら、やってみたいかも」</p><p>なんか、遠回しな言い方にちょっとひっかかった。</p><p>海のない埼玉の熊谷と、灯台のまち御前崎。</p><p>お互いにない色彩を補い合いながら</p><p>2人でスイーツ作りにも関わった。</p><p>二層になった緑のテリーヌ。</p><p>その名も『茶園の夜明け』。</p>


